第1話|白ソックスのまま、晶子は一線を越えた。

人妻小説シリーズ

夜の空気が、少しだけ冷たくなり始めていた。

久しぶりに再会した晶子は、昔と変わらない笑顔を見せながらも、その足元だけが妙に印象に残った。

白いリブソックス。

どこか無防備で、それでいて妙に色気を帯びたその姿に、俺は一瞬言葉を失った。

「…久しぶりだね、高ちゃん」

あの頃と同じ呼び方。
だけど、その声には、確かに違う何かが混ざっていた。

結婚して、子どももいる。
それは知っているはずなのに——

なぜか、目の前の晶子は“人妻”としての距離を保とうとしていないように見えた。

座敷に上がった彼女は、靴を脱ぎ、白いソックスのまま足を揃えて座る。

その仕草が、やけに丁寧で。
やけに艶めいて見えた。

「ちゃんと…覚えてる?」

不意にそう言われて、視線が合う。

覚えてるに決まってる。
忘れたことなんて、一度もない。

ただ——

あの頃とは違う。

目の前にいるのは、“誰かの妻”で、“母親”で。
それでもなお、俺のことを“高ちゃん”と呼ぶ女だった。

沈黙が流れる。

その間を埋めるように、晶子はゆっくりと足を崩した。

白ソックスのつま先が、畳の上でわずかに擦れる。

その音だけで、妙に意識が引き寄せられる。

「……ねえ」

小さく、囁くような声。

気づけば、距離はほとんどなくなっていた。

手を伸ばせば届く。
いや——もう、届いていた。

指先が触れる。

ほんの一瞬、晶子の体がわずかに震えた。

それでも、彼女は手を引かなかった。

むしろ——

「……ダメだよね、本当は」

そう言いながらも、目は逸らさない。

その瞳に映っていたのは、拒絶じゃなかった。

覚悟だった。

次の瞬間、俺は晶子を抱き寄せていた。

白ソックスのまま、彼女は抵抗しなかった。

それどころか——

わずかに、身体を預けてきた。

その柔らかさと温もりに、もう後戻りはできないと悟る。

「高ちゃん……」

呼ばれた瞬間、理性が切れた。

もう、止める理由なんてどこにもなかった。

人妻であることも。
過去であることも。

全部、関係なかった。

白ソックスのまま——

晶子は、俺の腕の中で一線を越えた。

 


彼女は、まだ脱がない――
脱がない理由が、ある。

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